自動車保険には物損と人身事故のうち慰謝料請求が出来るのは人身事故に限られています。
なぜ物損事故では慰謝料請求が認められていないのか、事故処理時点から既に違いがあると知っておくと良いです。
後から怪我をしていることが判明した場合などは、慰謝料請求出来ることもあるので自動車保険の処理方法についても知っておく必要があります。
自動車保険で物損事故にすると慰謝料が請求できないのはなぜ
自動車保険で物損事故扱いとすると、原則として慰謝料は請求出来ないとされています。
なぜなら、人身事故は死傷者が出たり後遺障害が残ったりしますが、物損事故の場合には車は壊れても怪我をした人がいないことで、慰謝料が発生するほどの苦痛とはされていないからです。
物は修理または買い替えを行えば済むという考え方を裁判所は行っているので、過去の判例を基にして一部の例外を除いて物損事故では慰謝料請求が出来ないことになっています。
実際に物損事故ならば民事だけで処理が済む軽い事故という扱いとなるので、精神的な苦痛を受けないと考えられるからです。
自動車保険は物損と人身事故では慰謝料だけでなく処理も異なる
自動車保険は、物損と人身事故では慰謝料請求可否だけでなく実際の事故処理も異なっています。
自賠責保険は人身事故の場合のみ適用出来るので、物損事故に際しては任意保険のみが適用されるわけです。
示談交渉により損害賠償額が合意に至ればすぐに示談成立となりますが、実際の事故処理時に作られる警察での書類にも違いがあります。
実況見分調書
人身事故ならば実況見分調書を警察が作成し、すぐに取り寄せることが出来るだけでなく怪我の治療費についてもしっかり支払われます。
しかし、物損事故の場合には実況見分調書が作られることは無く、物件事故報告書のみとなり保険会社からの補償もすぐに打ち切りにされてしまうわけです。
自動車保険の物損事故処理を避けて慰謝料を受ける
自動車保険を適用して慰謝料請求を受けるためには、物損事故処理にされてしまわないように自らの怪我について押し切られないように警察に実況見分調書作成を強く主張する必要があります。
怪我をしていないならば物損事故で問題ありませんが、治療に通う必要が無い分だけ示談交渉のみで済むので慰謝料請求がそもそもありません。
事故から数日後に興奮やショックから醒めてから痛みが出ることもあるので、後遺障害にならないように異変を感じたらすぐに医療機関を受診して診断書を作成してもらい、物損事故から人身事故へ切り替え依頼する必要があります。
自動車保険の物損事故で例外的に慰謝料請求が可能な例とは
物損事故ならば全ての自動車保険で慰謝料請求が出来ないかといえば、実際には例外的に慰謝料請求が認められるケースがあります。
具体的にはペット、墓石、芸術作品といった被害者にとって精神的な思い入れが極めて強く、家族の一員やかけがえのない作品といったものに対してです。
しかし、物損事故に対する慰謝料として認められる金額は、人身事故と比較しても遥かに少なくとても被害者にとっては納得出来る金額ではありません。
このため、物損事故で慰謝料請求を認めてもらうためには裁判が必要となり、時間と費用が余計にかかるといった問題があります。
自動車保険は物損から人身事故へ切り替えて慰謝料請求出来る
自動車保険は、一度物損事故として処理をしても怪我があると発覚した時点で人身事故へ切り替えて慰謝料請求が出来ます。
具体的には、数日後に痛みが出るタイプの怪我があるので、痛みを感じた時点で医療機関を受診して事情を話して医師に診断書作成を行ってもらい、事故届け出の警察署へ診断書と共に人身事故の申立を行います。
実況見分調書が作成された時点で、事故処理が人身事故となるので保険会社へ通知すると自賠責保険と任意保険双方の適用が受けられるわけです。
自動車保険でカバー出来る慰謝料請求についても人身事故へ切り替えが終わった時点から可能になります。
自動車保険の物損事故扱いで慰謝料が得られないのは勿体無い
自動車保険を物損事故として届け出ると慰謝料請求が原則として出来ないので、怪我の程度が軽いからという理由で黙っていると後遺障害が出た時に補償を受けられなくなります。
事故直後は興奮していて怪我をしていても痛みが出ないことが多いので、怪我をしていたならば物損事故にせず人身事故として慰謝料請求まで行うことが望ましいです。