死亡保険金の受取人は甥にできる?生命保険における死亡保険金の受取人として配偶者や一親等の親族(父母・子供)など以外にも甥を指定できるものなのでしょうか?本稿では、死亡保険金の受取人対象者として指定できる対象範囲について解説いたします。
一般的には死亡保険金の受取人は甥は指定できない
結論から説明すると、死亡保険金の受取人に通常、甥は指定できません。
一般的には、生命保険における死亡保険金の受取人となれるのは、被保険者の戸籍上の配偶者、被保険者の一親等の親族(父母、子供)、被保険者の2親等の親族(祖父母、兄弟姉妹、孫)に限られます。
そのため通常、甥を死亡保険金の受取人として設定することは通常は不可能です。
ただし、生命保険の被保険者に被保険者の戸籍上の配偶者もおらず、被保険者の1親等の親族、被保険者の2親等の親族もいない場合には、甥が死亡保険金の受取人となるケースが稀に存在します。
死亡保険金の受取人が甥となった場合①
被相続人に配偶者や1親等の親族、2親等の親族が存在しない場合には、甥や姪が代襲相続人として法定相続人となりえます。
その場合には、甥が受け取る死亡保険金は「相続」に該当し、相続人1人あたり500万円の非課税措置を受けることができます。
また、相続人が配偶者や一親等の親族以外だった場合に発生する相続税の20%加算の対象外となりますので税負担は少なく済みます。
ただし、このような事態は通常は考えにくく誰かしら2親等の親族以内の法定相続人がいることが一般的です。
犯罪などによる死亡保険金の不正受領防止や道徳的観点からも甥や姪など2親等の親族外の人間を相続人とすることは困難になっています。
死亡保険金の受取人が甥となった場合②
まず通常の死亡保険金受取りについて解説します。
死亡保険金の受け取りは、相続人1人あたり500万円までは相続税が非課税となります。
また、遺産分割協議をせず申し出、取得できるという特徴があります。
しかしながら、もし甥が死亡保険金を受け取ったとなると、甥は「相続人(第2親等以内の親族)」には該当しないため「遺贈」扱いとなり相続税非課税の適用はなされません。
受け取った死亡保険金がみなし財産として相続税の課税対象となってしまいます。
さらに、甥が死亡保険金を受け取る場合にかかってくるのが「相続税の20%加算」です。
受取人が、被保険者の配偶者もしくは1親等の親族以外だった場合にかかる措置で、相続税額の20%が余計に加算されるしくみとなっています。
死亡保険金の受取人として甥が授受する場合に課税額を低減する方法はないの?
被相続人に配偶者やお子様がいらっしゃらない場合には、甥と養子縁組することによって甥を法定相続人とすることが可能です。
その場合には、死亡保険金も非課税適用の対象となり、養子は1親等の親族に該当することから相続税の20%加算の対象からも外れることになります。
最大2人の養子を基礎控除や非課税金額の算出時に指定することができるため、税負担の軽減を図ることができるようになります。
相続税は、相続人1人あたり500万円まで非課税となることから養子2人を計算対象とすれば最大1000万円までを非課税対象とすることができます。
それでも死亡保険金の受取人を甥にするには?
保険会社の承認があれば死亡保険金の受取人として甥を指定することも完全に不可能というわけではありません。
保険会社によっては、保険金受取対象者について明確に規定はせず「親族」などと幅広く意味を取れる表記を行っている会社もあります。
どうしても甥に死亡保険金の受取りをしてほしいという場合には保険加入の際に十分に保険会社への確認や交渉が必要です。
遺言による受取人の変更(保険法44条1項)についても、保険会社が遺言書の効力発生を認知していなければならず(保険法44条2項)、被保険者死亡後、保険金支払いがなされる前に即刻、保険会社に通知しなければなりません。
やはり一般的には犯罪防止のため認められにくいことは理解しておきましょう。
死亡保険金の受取人は甥にできないことが多い 受取人にしても遺贈になってしまう
一部の特殊な生命保険会社を除いて、一般的には被保険者の甥を死亡保険金の受取人にすることはできません。
甥が死亡保険金を受け取る場合には相続ではなく遺贈に該当してしまうため、税制上の優遇処置を受けることはできません。
また、養子縁組については、すぐだれでも気軽に利用できるというものではないでしょう。
死亡保険金の受取については、そのあたりの注意点を十分に考慮しながら検討されることをおすすめいたします。