医療保険を親にかけることを検討している方は少なくありません。
教育費を捻出するのに精一杯で自分たちの老後の医療保険を後回しにしたご両親も多いはずです。
しかし高齢者の保険料は高く、現役世代が気軽に負担できるものではありません。
この記事では高齢者が新規に医療保険に入るデメリットと、医療保険の代わりに貯蓄をする有効性について解説します。
無理して保険に入るより貯蓄して柔軟に対応する方が上手くいくのはどんなケースか分かりますよ。
医療保険を親にかける必要性について
三大疾病症などの健康リスクは50歳以降急激に上昇します。
60歳以降で大きな病気にかかると術後の経過にもよりますが入院期間が長期化する傾向にあります。
そうなると当然、入院費用がかさみます。
入院費用は公的保険の適用外になることが多いため、民間の保険に頼らざるをえません。
経済的に余裕が無く入院が難しいとなると親族がサポートすることになります。
共働きが当然になりつつある今、現役世代に親の看病で仕事休むのは難しでしょう。
家計が破綻しないためにも医療保険で万が一に備えることは重要と言えます。
一方、手術などの医療行為に対する保障はどうすべきでしょうか?
これは国が提供している「高額療養費制度」や「高齢者医療制度」に頼ることになります。
この2つの制度について詳しく見ていきましょう。
医療保険を親にかける際に考慮したい高額療養費制度について
大きな病気にかかると入院費だけでなく治療費の支払いも心配になります。
しかし治療費に関しては手厚い公的保険のサポートが受けられるので安心です。
75歳未満なら原則国民健康保険が適用され、保険対象となる医療であれば費用の3割を負担すれば済みます。
さらに1ヶ月あたりの医療費の自己負担額に上限が設けられていますので、医療費が青天井で積み上がることはありません。
市区町村民税が非課税であることが多い60歳以降の世帯であればひと月の自己負担額の上限は35,400円です。
そして70歳を過ぎれば自己負担率は2割に減りますから、さらに医療費は軽くなります。
医療保険を親にかけるに考慮したい高齢者医療制度について
75歳を過ぎると医療費の自己負担率はさらに下がって1割となります。
ひと月の医療費上限も下がり、住民税が非課税なら8,000円以上は支払う必要がなくなります。
年収が370万円~770万円未満と現役世代並にある場合でも支払い上限は57,600円と十分に払える額におさまります。
そして、どれだけ所得があっても治療費の自己負担率は3割です。
このように年齢を重ねるほど、国民健康保険が対象としてる医療内容であれば万全の保障を受けられますから、手術などの医療にかかる費用を心配する必要はありません。
問題となるのは入院費用で、そこをカバーする民間保険が必要になります。
しかし高齢者が民間の保険を利用するには大きな障壁があります。
医療保険を親にかけるのは待って!高齢者の保険料は思った以上に高額
60歳を過ぎた両親を医療保険に入れる際に問題になるのは高額な保険料です。
入院が必要になるような大きな病気にかかりにくい40歳未満であれば保険料は安く済みますが、定期型の掛け捨て医療保険だと50歳台から保険料が上がり始め60歳には月額10,000円に届きます。
さらに65歳となると15,000円を突破し、仮にご子息が代わりに払うとしても大きな負担となります。
終身型の掛け捨て医療保険でも60歳から加入となと月額8,000円以上取られます。
このように、60歳以上の方が新規に医療保険に加入するのは大変経済的に負担が大きく現実的でない場合があります。
それでは医療保険に入る余裕が無い場合はどうすればよいのでしょうか?
医療保険を親にかけるより貯蓄に回して備えよう
60歳を過ぎた両親を医療保険に加入させるのは保険料の負担が大きいため難しいです。
無理をして途中解約となったら支払った保険料も無駄になってしまいます。
また、高齢者には3大疾病症以外にも認知症やパーキンソン病など24時間の介護が必要になる大きな病気にかかるリスクがあります。
既存の医療保険の多くは認知症を保障対象にしていません。
認知症専用の保険や医療保険の特約で保障するケースがほとんどです。
このように医療保険がカバーできる健康リスクは一部に限られます。
高齢の親御さんが抱えるリスクに柔軟に対応するには高額な保険に加入するよりも貯蓄がおすすめです。
十分な貯蓄があれば様々な問題に対応できますし、ご両親が天寿を全うされた場合には貯蓄を他の目的に利用できます。
医療保険を親にかける前に相談しよう
高齢のご両親を新たに医療保険に加入させるのは経済的に大きな負担となります。
仮に大きな病気になっても治療費に関しては国の保険で保障されますし、高額な入院費が払えない場合は病院と相談して分割払いにしてもらうことも可能です。
無理して医療保険に加入させるより、親御さんと何を保障すべきが話し合ってみましょう。
保険で保障対象となっている医療行為を望んでいない可能性もあります。
その上で医療保険に入るか貯蓄して様々なリスクに備えるか決めることをおすすめします。