成年被後見人は生命保険加入ができるのでしょうか?成年後見制度とは何か、どんな仕組みなのかを解説します。
成年後見制度では、被後見人の利益を最優先するため、相続税対策を目的とした生命保険の加入や生前贈与などは許可されないと考えられています。
成年後見制度を利用する上でのポイントやサポートを受ける方法についても解説するので、チェックして下さい。
成年被後見人の生命保険加入について|成年後見制度
成年後見制度は認知症や痴呆、精神障害、発達障害、神経障害などで判断能力が不十分でない人の財産管理や生活面の監護などを成年後見人が行う仕組みです。
成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つがあります。
法定後見制度は家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等が被後見人の利益を考えて代理で契約等の法律行為をしたり、被後見人が法律行為をするときに同意を与えたり、被後見人が同意を得ないで行った不利益な法律行為を後から取り消したりなど、被後見人を保護・支援する制度です。
任意後見制度は十分な判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分な状態になった場合に備えて予め任意後見人を選び、生活や療養看護、財産管理に関する事務について代理権を与える任意後見契約を公正証書で結んでおく制度です。
成年被後見人の生命保険加入について|生命保険加入は不可
相続税の納税資金対策として生命保険の死亡保険金を活用するケースがあります。
しかし、成年被後見人になると、「相続対策のため」という理由で生命保険に加入することは許可されないと考えられています。
成年後見制度は被後見人の利益になるかどうかという観点から家庭裁判所が監督するので、相続人のためとなる納税資金対策としての生命保険加入は認められない可能性が高くなるのです。
被後見人の財産は後見人が管理しますが、その事務や管理については家庭裁判所に定期的に報告して監督を受けることになります。
被後見人が後見開始前に締結していた保険契約についてはそのまま継続したり、保険料の支払いが過大である場合には解約、保険内容を見直すなど、後見人の裁量の範囲判断として認められています。
成年被後見人の生命保険加入について|生前贈与・学資保険加入も不可
成年後見制度では、相続対策として生前贈与や学資保険加入も被後見人の財産を減らす行為として許可されないと考えられています。
生前贈与は生前に自分の財産を家族に移転させることで相続財産を減らし、相続税を引き下げることができます。
贈与には贈与税が課税されますが、贈与税を低く抑えることができる制度が複数あるため、贈与税の発生を最小限に抑えつつ、相続税を効率的に節税することができます。
生前贈与を受けることで、将来的に相続税が節税できて得をするのは相続人であり、被後見人には一切利益がないため、許可されないと考えられています。
同じ理由で、孫の学資のために学資保険に加入することも同様に許可されないと考えられています。
成年被後見人の生命保険加入について|後見制度支援信託
要後見状態になった時、後見制度支援信託を活用すると財産の適切な管理・保護が可能になります。
後見制度支援信託は被後見人の財産のうち、日常的な支払いをする分だけ後見人が預貯金で管理し、しばらく使用しない分は信託銀行等に信託する仕組みです。
信託財産は元本が保証され、預金保険制度の保護対象になります。
財産を信託する信託銀行等や信託財産の額などは、原則として弁護士・司法書士等の専門職後見人が被後見人に代わって決めた上で家庭裁判所の指示を受けて、信託銀行等との間で信託契約を締結します。
信託財産の払い戻しや信託契約の解約には、家庭裁判所が発行する指示書が必要になります。
成年被後見人の生命保険加入について|生命保険会社のサービス
生命保険会社では成年後見制度のサポートや成年後見人を紹介するサービスを提供しています。
太陽生命保険の「成年後見制度紹介サービス」では、成年後見制度に関する相談や利用を希望する場合に専門機関に取り次ぎ、推薦する司法書士を紹介します。
病気や障がいなどで契約に関する各種手続き・請求をする人の判断能力が低下し、対応が困難になった場合でも、成年後見制度の相談・利用を円滑に進めて、法律面・生活面をサポートします。
第一生命保険の「成年後見制度サポート」では、将来の請求手続などに備えて「財産管理委任契約」に関する相談を希望する場合や請求手続などにあたり成年後見人の選任を必要とする場合に、法的な手続きのサポートを行なえる司法書士を紹介します。
成年被後見人の生命保険加入について|まとめ
成年後見制度は認知症や痴呆、精神障害、発達障害などで判断能力が不十分でない人の財産管理や生活面の監護などを成年後見人が行う仕組みです。
成年後見制度は被後見人の利益になるかどうかという観点が重視されるので、相続人の利益となる納税資金対策としての生命保険加入や生前贈与、学資保険加入は許可されないと考えられています。
後見制度支援信託や生命保険会社が提供する成年後見制度に関するサービスを利用すると、成年後見制度における法律面・生活面でのサポートを受けることができます。