生命保険の死亡保険金を受取ると、相続税の心配をする人がいますが、相続税の課税対象になることは滅多にありません。
特に、受取人が妻の場合は皆無といっても過言ではありません。それは、死亡保険金に対する相続税の非課税枠があるからです。
生命保険で契約者が92歳の人の相続税の課税|相続対策に有効な理由
生命保険は家族に対する相続対策として有効となっています。
それは、以下の理由によります。
- まとまった額の財産を家族に残せる。
- 死亡保険金には高額な基礎控除がある。
- 相続税の税率が低い。
- 相続税には高額な基礎控除がある。
死亡保険金は以下の金額が課税対象額から控除されます。
500万円×法定相続人の数
相続税と贈与税の税率の違いは以下になっています。
- 相続税率
相続額1,000万円:10%
相続額3,000万円:15%(控除額50万円) - 贈与税率
贈与額1,000万円:40%(控除額125万円)
贈与額3,000万円:50%(控除額250万円)
以下の金額が相続税の課税対象額から控除されます。
3,000万円+(法定相続人の数×600万円)
生命保険で契約者が92歳の人の相続税の課税|死亡保険金に対する相続税の課税
相続税は課税対象額に税率を掛けて算出されます。
従って、課税対象額が少なければそれだけ税額も減ります。
例えば、父親が契約者・被保険人であり、2,000万円の保険金受取人が母親だったとします。
そして、2人の子供がいたとすると、父親が亡くなった場合の死亡保険金の控除額は以下になります。
500万円×3人=1,500万円
従って、母親の相続税課税対象額は500万円(2,000万円-1,500万円)です。
ただし、相続税には死亡保険金を含めたトータルの相続財産に対する基礎控除額があります。
仮に、生命保険の他に遺産が9,500万円あった場合は、課税対象額500万円を加えた1億円に対する控除額を計算します。
1億円-(3,000万円+600万円×3人)=5,200万円(課税対象額)
なお、配偶者には1億6千万円か、法定相続分のどちらか多い方の金額が控除されます。
従って、母親は相続した遺産が1億6千万円か、法定相続分(母と子供の場合は1/2)以内であれば、相続税を納める必要がありません。
生命保険で契約者が92歳の人の相続税の課税|相続対象にならないケース
生命保険を相続対策にするには、死亡保険金が相続税の対象にならなければ意味がありません。
実は、死亡保険金が必ず相続税の対象となるわけではありません。
死亡保険金は以下の場合で対象となる税金が異なります。
- 契約者:父、被保険人:母、受取人:父=所得税(住民税含む)
- 契約者:父、被保険人:母、受取人:子供=贈与税
- 契約者:父、被保険人:父、受取人:母または子供=相続税
1のケース
保険料の負担者と保険金の受取人が同じケースは所得税が課されます。
このケースは、受取った保険金から払込済の保険料を差引いた金額が所得税の課税対象となります。
2のケース
このケースは、保険料の負担者である父から保険金受取人である子への贈与と見做され、受取った保険金の全額に贈与税が課されます。
3のケース
契約者と被保険人の同じケースだけが相続税の対象とされます。
生命保険で契約者が92歳の人の相続税の課税|一時払い終身保険という生命保険
生命保険は通常、月払いや年払いなど定期的に保険料を納めていくものですが、中には一時払い終身保険というものがあります。
一時払い終身保険とは、名前の通り「保険料の全額を最初に払込む、一生涯保障の生命保険」のことです。
この保険には勤務先や年収などの職業告知のみで加入が可能な商品があり、健康状態に不安のある人でも加入しやすいというメリットがあります。
その他にも、一時払い終身保険には以下などのメリットがあります。
- 払込む保険料の総額が定期払いより割安になります。
- 解約返戻金が高利率になることで、資産運用に活用できます。
- 相続対策に活用できます。
生命保険で契約者が92歳の人の相続税の課税|一時払い終身保険の生命保険には相続対策の効果
高齢者の加入している一時払い終身保険は相続対策に利用されている面が少なくありません。
その理由には以下の2つがあります。
受取人の指定
生命保険であれば、受取人を指定できます。
終身保険は契約者(被保険者)が死亡した際の保険金受取人を予め指定するようになっています。
つまり、保険の契約者が自分の意思で自分の財産を特定の相続人に渡すことができます。
単なる法定相続になると、遺産分割に自分の意思が反映できません。
非課税枠の利用
単に、現金として保有していると、遺産相続の際に一般的な基礎控除しか受けられません。
従って、他に高額な不動産を所有している場合は相続税を課される可能性が高くなります。
ところが、生命保険にしておけば別途「500万円×相続人の数」という控除額が適用されるため、相続税を課される確率が大幅に減ります。
生命保険で契約者が92歳の人の相続税の課税|一時払い終身保険という生命保険
相続税法が改定されたことで、相続税の基礎控除の金額が大幅に減額されました。
従って、不動産などの高額な財産を保有していると、相続税を課される可能性が高くなっています。
遺産相続において、余分な税金を取られないように考慮することは脱税でも何でもありません。
なお、厳密には死亡保険金は受取人の固有の財産であるため、相続財産ではありませんが、税務上では相続財産と見做されています。